円高問題の行く末

 円高の何が悪いか。それはこれまでも繰り返してきたテーマなので、止めておこう。デフレが進めば、円高になり、かつ現在の産業構造を前提とすればそれは悪夢でしかない。そんなことをこれまで書いてきた。

 ところで、円高になると調達・購買部門の買ってくる海外部品は安価になる。少なくとも、為替の計算上はそうにしかならない。

 ただし、私はこれまで円高になっても、なぜか調達品が安くならないという奇異な「言い訳」に出会ってきた。これらはすべて円建て契約の事例である。

 1. 円高なんですが、どうもサプライヤー側の理由で安くならないようなんです......。

 2. 購入量が少なくなっているので、その分値上げしてほしいとサプライヤーが申しておりまして......。さほど円高メリットはないかと......。

 3. これまで赤字販売だったようで......。円高だからといってすぐに価格は改定してくれないようで......。

なという、言い訳にもならない理由ばかりだ。

 残念だ、と私は思う。せっかく円高という(調達・購買部門にとっては)チャンスが到来しているのに、それを好機にできない。せっかくコスト削減チャンスがあるのに、それができない。

 調達・購買部門は、もちろんコスト削減だけを担う部門ではない。ただ、円高のときにやれることなど、限られている。モノは売れない、雰囲気は暗い。そのときせめて円高による輸入メリットを活かし、社内に発言力を持ってほしい。

 円高が悪い、円高が悪い。それで問題が解決するのであれば、何万回でも叫んでいればいい。

坂口孝則(http://www.co-buy.co.jp/

部品逼迫は歴史を変えるものではない

 先日の報道によると、インドで自動車部品が逼迫しているという。需要が急増し、生産量も大幅に増えたことから、インド調達の「脆さ」が露呈したようだ。

 しかし、一連の報道でどうも違和感が残る。それは、報じられる結論が、あたかもあらかじめ決められたものにすぎないからだ。

 1. インドの製造業はまだまだ未知数だ(→だから日本の製造業は捨てたもんじゃない)

 2. インド調達には落とし穴がたくさんある(→だから日本の製造業は捨てたもんじゃない)

 3. インドは未熟で、製造拠点にするレベルではない(→だから日本の製造業は捨てたもんじゃない)

 これはステレオタイプといっても良いほどだ。もちろん、その指摘には頷けるものもある。誰だってインドが日本製造業並みのレベルにあると思っている人はいないだろう。

 しかし、だ。よく考えれば、日本の半導体業界等も、かつては欧米からそう言われたのだ。映画「バックトゥザフューチャー」では、過去の主人公ドク が「なぜ日本製の半導体なんて使うんだ。安物だ」というシーンがある。それに答えて、マイケル・ジェイ・フォックス演じるマーティは「知らないのかい。日 本製は最高なんだぜ」と言い返すシーンがある。たった数十年で世界の経済勢力など簡単に塗り変わることを示唆している。

 思うに、エズラヴォーゲルが「ジャパンアズナンバーワン」を書いてセンセーショナルを巻き起こしたのは1979年の出来事、たったの30年前にすぎない。

 おそらく、であるが。30年後の私たちは、インド製造業について懐疑的な現在を懐かしく思うのではないか。そのときには、このような会話が繰り広げられるに違いない。

 2010年の主人公「なんで、インド製の自動車なんて乗っているんだ。故障ばっかりで安定しない」。2040年の主人公「知らないのかい。もう自動車は最高技術を持つインドしか作ってないんだぜ」と。

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異業種競争のはじまり

 先日の報道によると、コクヨがペーパーレス化を目論みiPadを1650台導入するという。まずは営業部門やマーケティング部門が中 心のようだ。資料等を莫大にもっているところである。ほんとうに、iPadを活用することができれば、大幅に紙代やスペースを削減できるだろう。

 先日、iPadで書籍を読んでいる人を見た。別に電子書籍を読んでいる姿はもはや見慣れた光景だ。ただ、書籍をすべてスキャンして、何百というPDFを読んでいた。

 私も現在はスキャナーで読み込んでいる。それはパソコンで読むようにしている。「パソコンで読むのはもう古い。これからはiPadで読むべきだ」 という。なるほど、iPadがあれば紙の本のように読むこともできる。私はiPhoneでは読んでいたが、たしかにiPadで読むと違和感もない。

 さらに面白かったのは、iPadが不動産の代わりになっていることだ。読書家にとって蔵書をどうするかという問題は常に頭の中にあった。蔵書のた めにマンションの一室を借りている人も知っている。これまで、「どのマンションを借りたほうが良いか」「どのマンションが安いか」という話題になったこと がある。

 ただ、もう現在ではマンション間の闘いではなさそうだ。マンションと対決するのは、電子リーダーであり、カバンにすっぽりと収まるiPadのようだ。

 これは異業種間競争の闘いの象徴のように私には感じられる。おそらく、自動車産業が闘うのは、新興国の自動車産業ではなく、インターネット企業で はないか。自動車はこれまでモビリティを売り物にしてきた。ただ、そのモビリティを活かして遠くに行けたとしても、その先の光景をネット上で見ることがで きるのであれば(それがたとえリアルではなかったとしても)、自動車は不要になる。もちろん運転する喜びはあるだろう。しかし、さまざまな異業種間競争が 花開くことの想像例としてはありうるだろう。

 コクヨの例は効率化とペーパーレスが焦点だった。しかし、それだけでは終わらない。少なくとも私はさまざまなことに思惟を重ねてしまった。

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デフレは円高とつながっていく

 先日の報道によると、トヨタ自動車の副社長が「日本円が円高になりすぎて、日本車は輸出できない」と答えたという(大意)。

 この前、電車に乗っていると、私の隣の若手サラリーマン同士が話していた。「なぜ、日本は不況なのに、日本円が高くなるのか」と。なるほど、そも そも経済が強い証である通貨高が、このデフレの日本に到来するはずはないというわけである。「だってこんな弱い国の円なんて誰も買いたがらないでしょう」 と。

 ここで説明をしておこう。というのもむしろ、デフレが通貨高を呼ぶからだ。

 デフレとは、お金よりもモノがあまる状況だ。厳密な定義ではないが、お許しいただきたい。ということは、少しのお金でたくさんのモノを買えることになる(これまた厳密ではないがご容赦を)。

 それは、まさに通貨価値が高いということを示す。なんだか不思議だが、そういうものである。だから、他国がインフレ状態にあるときに、日本がデフレ状態にあれば、それは円が高く「なってしまう」状況を呼び起こす。

 これまで、一般的には「デフレって何が悪いのさ。モノが安くなるからいいじゃない」という素朴なギモンを持っている人がいた。なるほど、それは超・短期的局面では正しいかもしれない。しかし、デフレはまわりまわって、世界経済の中で円高を引き起こしていく。

 私は、もう円高のうちに海外からモノを買ってきたら、と提案してきた。せめて円高であれば、それを享受する方向に進まなければソンだからだ。たと えば、資源を買え、商品を買え、食料品を買え、ということだ。それはデフレの中にあって、ミクロレベルでできる一つの処方箋だったと私は思う。

 それは、デフレ+円高不況が続くことだから、日本経済全体からすると、けっして望ましいとはいえない。

 しかし、と私は思うのだ。もしかしたら望ましくないかもしれない。ただ、デフレが円高を呼ぶ現状を説明しても、それはマクロの説明にはなるもの の、ミクロの改善策を導きだすことはできない。マクロな問題ばかりを考えていても、結局は生活者・労働者の目の前の改善になりはしない。

 もちろん、円高やデフレを嘆くのはいいだろう。ただし、次に考えるべきは、この不況と円高を逆手にとった戦略だろうと私は思う。

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売上はすべてを解決するのか

 いま、二つ盛り上がっているところがある。「家電」業界と「ビール」業界だ。猛暑のせいだろうか。昨年と比して2~3割の売上増だという。

 まさか、とは思うが、まるでこの猛暑は不況の日本経済を救う「神の手」かもしれない。私はそれほど宗教家ではないが、そうと信じたいほどのタイミングだった。

 企業はどこであっても売上がほとんどの問題を隠蔽するといわれる。売上さえあがれば、多くの「困りごと」は失念される。コスト削減だってそうだ。 「これまでコストが垂れ流しされていた」と、常に過去形で語られる。そのときには売上が高かったので、そんなことに気づかずにいたというわけだ。

 そう考えると、コスト削減に注力するのは、ある程度「企業の成熟期」か「不況期」のどちらかだと想像できる。その二つのタイミングか時期でなければ、コストの垂れ流しなど気づかれないのだ。

 猛暑というのは、一つの売上増のきっかけではある。しかし、それは問題を完全解決するものではない。たとえば、産業構造。家電が売れることで、そ もそも家電を作り続けることの是非は問われない。私は家電の継続生産を否定したいわけではない。その問いの存在自体の消去を問題にしているのである。

 もしかすると、この猛暑で売上が上がることにより、これまでの問題が忘却されている企業があるかもしれない。現在の好調は、既存の「問題点」を隠蔽する。

 猛暑で商品の売上が好調なのは良いことだ、と素直に私は思う。しかし、同時に「売上だけがすべてを消す」風潮にも異を唱えておきたい。

 暑いからビールは飲むけどね。

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中小企業は中国を目指す

 かくも経済理論通りに動くのか―。

 そう思わざるをえなかった。先日の報道によると、神奈川県内の中小企業が中国進出に熱心で、多額の投資を始めたという。その理由も、清々しい。「仕事があるから」。

 取引先が海外生産を推進している以上は、その下の中小企業が追随せざるをえない理由はあるだろう。しかし、どちらかというと、「乞われて進出した」のではなく「進出しないと生き残れない」という面が大きい。

 これまで、どちらかというと、「海外に仕事が逃げて、窮する日本中小企業」と「海外に発注を移管する日本大企業」という構図があった。しかし、どうやら、中小企業内でも、将来を考えて日本を(悪くも良くも)見捨てるところがでてきたらしい。

 これは経済理論そのままである。

 仕事がなければ、なんとか国内産業は頑張ろうとする。「付加価値をつけろ」「生産性をあげろ」。しかし、そののち、やはり行き詰まり感が全体を襲い、選ばれる道は「海外シフト」と「産業の崩壊に伴う新たな産業への脱皮」のどちらかだ。

 IBMはパソコン事業を中国に売却したことがあった。あのとき、IBMが敗れ、中国(レノボ)が勝利したという報道がなされた。私は違うとおも う。おそらくIBMは意図的にパソコン事業を捨てたのであって、そこからアプリとコンサル、ソフトに特化した新たな産業を創り上げた。

 日本はどうやら、そのように産業の破壊と新たな産業への脱皮は選択しないらしい。あくまでも海外シフトの感が強い。それは選択肢の二つの一つではある。経済理論のまま選ばれたその選択肢が、日本の未来をどのように彩るかはわからない。

 ただしいえることは、日本は二つの選択肢のうち、ある一つを選ぼうとしているということだけである。おそらくその結果がわかるのは、5年もかからないだろう。

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政府調達は、おそろしい

 衝撃的なニュースだった。米政府が、調達契約に関わる件でオラクルを提訴したという。しかも、「詐欺行為」なのだそうだ。内容を簡単 に記そう。1998年から2006年にわたって政府とオラクルはソフトウェアの契約を結んでおり、その期間に数億ドルの詐欺をはたらいたという。なんとも 物騒な話だ。しかし、私はあまりオラクルを一方的に責める気になれない。

 その詐欺行為の内容だが、政府はオラクルに対して値引き交渉を行ったという。契約では、一般(市況)の価格が引き下げられた場合は、政府に対する 価格も下げることとされていた。しかし、オラクルは正確な情報を政府に伝えず、それが政府の数億ドルの損害につながったという。

 報道もまだ一部にとどまるので、あまり断言するのは止めておこう。しかし、ここには難しい問題が内包されている。

 1. 市況(他顧客)の価格が低減しているからといって、それを一般化することはできない。つまり、ほとんどのソフトウェアがなんらかのカスタマイズを施されているはずで、その低減額が何%だからといって、それを他にも当てはめることは難しい

 2. 他顧客への価格情報を一般論として他社(者)に提示することは難しい

 3. 取引条件等により価格は変化することが当然なので、「下げなければいけない」と義務化することは難しい

という「難しい」だらけのことだ。もちろん、下げることは契約に盛り込まれていたようだし、第三者がとやかくいう問題ではないかもしれない。しかし、私はこの提訴のニュースには驚かされた。それはこれらの三つの要因からである。

 政府調達は、おそろしい、と書いた。それは調達する側のおそろしさだけではない。政府に調達してもらう側にとってもおそろしいのだ、ということをこのニュースは黙示してくれる。

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 先日の報道によると、ロバート・ゲーツ米国防長官は7000億ドルといわれている米国防予算を削減(1000億ドルほど)すると国防関連商品請負業者の前で宣言したという。

 ここで大きな柱とされているのは、次の三つだ。

 1. 業者に毎年2、3%の生産性向上を依頼する(おそらく、この2、3%というのはコスト削減の原資にせよ、という意味であろう)

 2. 現在、委託している業務のうち幾許かを米国政府職員に置き換えること

 3. 契約方法の一部を変更すること(随意契約の見直しか、いまの時点では述べられていない)

これらだった。米国政府が民間並みに近づいてきている、という言い方もできるだろう。1.は企業がどこでもやっている、サプライヤーへの年次コスト 低減にほかならない。2.は内外策切り替えに値するだろう。3.も、企業が支払い条件や競合条件を見直すことによるコスト低減だ。

 ところで、面白いのが、このコスト削減の成果を「海外派兵部隊の装備と支援」に費やすとしている点だ。すなわち、購入量を削減することは目的とし ているものの、同時に他への支出額を増やすという構図なのである。これはほんとうのコスト削減かどうかはわからない。しかし、緊急の支出削減が求められた 背景には、喫緊の事情がありそうだ。

 これら米国政府のコスト削減案は、どちらかといえば、全体額を抑えつつ、しかし完全に減らすのではなく、他支出への原資としようとしている。

 また、私見では、これらのコスト削減は、まだ仕様や使用条件には踏み込まず、まだ「できることからやる」という程度にとどまっているように感じられる。おそらく、仕様や使用条件に踏み込むのは今後、ということになるのだろう。

 国防のコスト削減は始まったばかりである。

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Gメンは日本に根付くのか

 Gメンという言葉がある。正確には、米国連邦捜査局(FBI)直属の捜査官のことだ。ただし、日本では、麻薬摘発などの特別の任務の捜査官をいうことがある。それに、テレビドラマでは「特殊任務を担う人たち」という意味で使われることもある。

 しかし、現実には各都道府県にも設置が検討されているという。その場合のGメンとは何か。不正会計を見つけるチームのことだ。官の支出抑制に対す る叫び声が強い。いまでは、少額の手土産や、簡単な立食すらも都道府県庁(官公庁)は難しいという。支出抑制の一環なので、私は批判しない。

 ただ、それでも隠れたる「ムダ」や「過剰支出」があるはずだ--。そんな勘ぐりからか、都道府県庁でGメンの設置が検討されている。候補者は公認会計士等から選定するという。

 しかし、いっぽうで興味深い報道がなされていた。神奈川県では、そのGメン候補者が辞退をつづけ、誰も適任者がいなくなってしまったという。

 これは、

  • そもそもGメンを公認会計士に依頼する費用自体がもったいない
  • 外部委任よりも、まずは内部で何ができるかを検討することが先

というもっともな二つの理由からだった。内部の人から歓迎されていなければ、どんな公認会計士だってGメン就任を嫌がるだろう。

 そして、これはもう一つの大きな問題を示唆している。それは日本企業に外部監査員という仕事が果たして成立するかという問題である。外部取締役も、そもそも海外の会計業務から輸入する形で根付いた。

 内部の人間だけでは洗浄できない汚れもある(これは神奈川県に汚れがあるといいたいわけではない)。それを外部の力を利用して清潔化することができるか。

 私には、一つの違う問題を提起しているように思えてならない。

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アジアメーカーは脅威なのか

 かつてある講演を拝聴したことがある。壇上の男性は「これからアジアのメーカーが脅威になります」と何度も叫んでいた。その根拠とな るのが、アジアの開発力だ。これまで、日本のメーカーの開発力にとても追いつけないと考えられていた彼らのそれは、もう日本並みに近づいているという。

 しかも、開発期間も短縮しているという。アジア全土に張り巡らされたネットワーク網を使い、開発を分担し、あっという間に製品を作ってしまうのだとか。そこで、その男性が紹介してくれたいくつかのメーカーをあとで調査することにした(固有名詞はさすがに書けないが)。

 すると、そのメーカーが作っていたのは、私が見る限り完全に日本メーカー製品の模倣だった。明らかに日本のXX社のSUV、○○社のスクーター、あるいは△△社のデジタル機器......、私は驚いた。

 なるほど、中国では儒教文化があるために、日本人の感覚の「模倣」とは相容れない。彼らは、尊敬する対象を真似することで意を表す。だから、良い意味では日本製品が彼らに尊敬の目を持って接されていると思うこともできるだろう。

 しかし、私は別の感想を持った。「単なる真似じゃん」と。おそらく、これは検索エンジンと既存の新聞社の関係にもあてはまる。さも対立しているか のように思われているこの構図は間違っていると思う。おそらく、検索エンジンは、既存の新聞社に「絶対に潰れてほしくない」と思っているのではないか。な ぜなら、自分たちが引用する情報源がなくなってしまうからだ。

 その意味では、アジアメーカーにとっては、日本は「儲かってほしくないけれど、潰れてほしくない対象」なのかもしれない。模倣先として日本の役割 を定めているのかもしれない。それは、良いことなのか悪いことなのか。おそらく好ましくはない。では、とするならば、アジアメーカーが模倣できないような 高付加価値で高技術の製品を作るしか無いだろう、という凡庸な結論ではあるけれど。

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半導体納入とサプライヤー選定

 日産のカスタムIC納入遅延問題で、どうやら8月からは正常納入がはじまるという。多くの報道で、「STマイクロ」という固有名詞が書かれているので、もう発表して良いものかもしれない。

 ただ、多くの報道で「他社が複数購買だったのに対して、日産が1社購買だったから、納入遅延が生じた」と書かれているのには違和感が残る。以前も 書いたとおり、ここには誤解があるようだ。「他社が複数購買だった」といっても、同じICを複数社購買している事例はほとんどない。実質上、一つのカスタ ムICにおいては、1社購買が普通だ。カスタムICのマスク代を知っている人であれば、それを複数作成するのがどれほど高額かわかるだろう。

 また、1社購買であったとしても、ほとんどのサプライヤーの部品は遅延なく納入されている。このことはどう説明するのか。説明できないだろう。もともと、1社購買が基本であるところに、ある種の誤解が生じたと考えられる。

 私にはもっと単純なところに問題があったように感じられる。

 それは1社購買と複数社購買の違いではなく、単なる生産上の問題である。生産管理、納期管理の問題だ(S社の)。そこを解決しないと、正しい問題解決ではないと思うからだ。

 また、この問題は「行き過ぎたコスト低減」とも関係がない。「行き過ぎたコスト低減」ならばどこでも目にすることができる。しかしこれも、ほとん どの部品は遅延していない。そもそも、コスト管理と納期管理が、サプライヤーのなかで別部門になっているので、あまり影響を与えない。

 納期遅延を購買の方針ミスであるかのように報じられることには同情を禁じ得ない。

 納期タイミングや発注量、あるいは事前の合意、または生産管理の問題等が論じられるべきであって、サプライヤー数ではない。

 日産、日立がんばれ、と私は申し上げたいのだ。

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為替に翻弄される日本

 先日、トヨタ自動車の記者会見があった。同社の副社長曰く、「1ドル=90円の為替レートでも利益をあげることのできる体制づくり」を目指しているのだという。その施策の目玉は海外への生産移転であり、国内の生産能力は70%ほどに減じる予定のようだ。

国民経済計算から、各産業の売上高と労働者数を把握することができる。そこから労働時間を求め(これは平均値を利用する)、そこから「100万円を生産するために必要な就業者数」を計算する。

 それによると、輸送用機器は「0.073人」だ。この数字は、たとえば繊維業界の「0.305人」と比べると低いことがわかる。自動車産業は 100万円の価値を創出するために0.073人しか必要がないということだ。もちろん、これは低価格車では実現できない。なので、日本の自動車産業企業 は、高級車を中心としたラインナップを世界に発信してきた。

 この等式は、「日本は高級車を生産し、それが世界で売れる」という前提で成り立っていた。その前提が崩れたとき、日本経済のひずみがはじまった。 私は、自動車各社の戦略が間違っていたとは思わない。もとも日本人労働者のコストをペイするためには、高級車のような高付加価値商品をつくらざるを得な かった。ただ、今の時代は、よりコンパクトでスマート、安価なクルマが求められているということだ。

 トヨタ自動車の記者会見では、高燃費車・安価というフレーズが繰り返された。新興国市場としてターゲットはインドと中国だという。そうだとする と、高級車中心のラインナップだったところから、現地生産・安価の戦略に切り替えざるを得ない。そして、内需が拡大しない以上、これまでより為替変動に敏 感にならざるを得ないだろう。

 「1ドル=90円の為替レート」であっても利益の出る仕組みづくり。それは、もしかすると、日本製造業にあらためて突きつけられた最後の試練なのかもしれない。

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遥かなる電子調達

 面白い記事があった。WTO加盟各国は、政府の調達で電子入札制度を導入するという。海外の企業がその電子入札に容易に参加することを目的としており、その結果として安価な商品・サービスを調達することが目的のようだ。

 何が面白かったかというと、WTOが「各国とも財政が厳しいから、政府調達を改革して財政健全化せよ」と述べたことだ。

 ここには二つの問題が潜むように私には思われる。

 1. 財政だけをとらえるのではなく、国全体の経済を考えると、海外企業に発注しない方が、効果がある場合があること

 2. 海外企業の与信調査は容易ではないこと

この二つだ。1.から説明しよう。これまで政府調達の高額さが批判されてきた。100億円の調達品も、業者を替えれば90億円で済んだ。やっぱりこ れまでの政府調達はダメだったのだ、というわけだ。しかし、マクロ的には必ずしもそうではない。もし10億円の過剰発注が存在していたとしても、その過剰 発注はさらなる投資をもたらす。要するに、川下への発注額も増大していくのだ。個人の場合は消費性向とも呼ぶが、企業がさらに川下の業者に過剰な支払いを 行う。それが循環すると、日本経済にとって、ほんとうに100億円で発注しておいたときと、90億円の発注時の、どちらかがよいかは実証的にも微妙だ。

 もちろん、そんなことは知らないが、財政的に厳しいから少しでも安くせよ、という意見もあるだろう。では、2.だ。もし政府調達で海外企業が増加 していくとすれば、与信調査機能が不可欠となる。残念ながらその機能を持っている官公庁はない。それに、自信満々に海外企業の与信を提供できるサービス業 者はない(ない、は言い過ぎの側面もあるが、闇社会とのつながりを含めて万全なところは少ない、という意味だ)。もちろん、与信調査は必要だろう。それに は莫大なコストがかかる。しかも参入してくる海外企業をすべてチェックするのは簡単ではない。

 私は電子調達を否定したいわけではない。難しいし、課題があると言っているにすぎない。タイトルは「遥かなる」とつけた。どんな遠い距離でも、歩いていれば、きっとたどり着く。

 そのときに必要なのは、歩くのを止めないことだ。

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 先日、面白い記事に目が止まった。レノボグループが、生産拠点を中国の西部に移管するという。なんでも、現在の生産拠点は大都市にあるため労務費が上昇しているようだ。すなわち、まだ労務費が抑えられる西部に移行していこうというわけ。

 ここで起きているのは、中国国内格差を利用したコスト低減である。もちろん、日本国内にも格差はある。しかし、元・社会主義国の中国の方が格差は 大きいということがわかる。日本で、横浜の労務費が高いので佐賀に移管します、などということは考えにくい。日本は法人税等の引き下げ特恵すらも地方が設 定できないのだ。

 中国西部で生産されたパソコンはいままでどおり、アメリカや日本、ヨーロッパに輸出されていくだろう。私たちはどこの誰が作ったか、そしてどこかの誰に替わったのかもわからないまま、パソコンという文明の利だけを享受することになる。

 ここで考えてみよう。もし、中国の労働者を日本が移民として受け入れていたらどうなっていたかを。当初は安価なコストで生産出来ていたかもしれな い。しかし、日本人労働者との給与格差はいつまでも続くわけではない。現在、中国の都市部で給与があがっているように、直に日本人労働者のコストと変わら なくなるだろう。

 これは一つの示唆を私たちに教えてくれる。とすれば、私たちは安易な移民受け入れではなく、製品を「輸入さえすれば良い」ということだ。移民では なく、中国が生産したものを購入すれば、それは(場所がどう移管するのであれ)中国の労働力を活用することにほかならない。受け入れてしまったら、社会保 障やら文化差やらを解決せねばならない。しかも、給与はあがっていく。一度受け入れた移民はずっと面倒を見ねばならない。

 そう考えると、大袈裟に言えば、バイヤーとは各国の労働力を利用し、日本の社会制度の持続をはかる職業だといえなくもない(やっぱり大袈裟だったかもしれない)。輸入とは移民受け入れと等価である。しかも、輸入は既存の社会システムを変更することなく実行できる。

 これは差別主義者のコメントではない。単に事実を申し上げているのである。

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機械化はほんとうに悪なのか

 先日の報道によると、岩塚製菓が全工程において包装を自動化するという。お菓子の製造で有名な同社である。同社は、包装に加えて、パ レットに積載する工程までも自動化するという。目的は当然コストの削減だ。のこりさまざまな工程についても同じく自動化・機械化を推進していくようだ。

 このニュースを聞いて、「ああ、また労働者の仕事がなくなる」という声があった。また、同社の取り組みだけではなく、昨今は「自動化」「機械化」は効率向上、生産性向上の意味合いよりも、「人減らし」という側面で受け止められることが多いようだ。

 実は、私もそのような論調で書いたことがある。単純作業の労働者の仕事は海外に逃げていかざるを得ないだろう。あるいは、機械に代替されるだろう。そうすると、もっと日本の労働需要は減っていくだろう、と。

 もちろん、これは当然である。企業は利益を追求する。人よりも機械の方が安く生産性も良いとわかったら、当たり前ながら機械に切り替える。それはもちろん、既存の作業者が減ってしまうということを意味するけれど、それはしかたがないことだ。

 ところで、この機械化は悪いことだろうか。必ずしもそうはいえない。企業の生産性を高めようと思えば、設備投資によるものか、人的なものによるも のか、のどちらかしかない。人的なものは人口減少の日本において、しかたのない側面があった。むしろ、日本企業は人口減少を前にして、機械による生産性を 高めているということもできる。

 また、機械化によって労働者がほんとうに悪影響を受けるかというと、実証することはなかなか難しい。というのも、機械化によって産業全体が安価な 商品を提供できるようになるからだ。マクロ的には、労働者の給与水準はたしかに下がっているものの、生活に必要な各種財の価格レベルはそれ以上に下がって いる。

 機械化はこうやってみると、生産性向上をもたらす一つの施策である。なるほどマクロはわかった、でもミクロとして労働者個人とすればどうすればよいかって? それはもちろん、機械に代替できない仕事を模索することだ。

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眠れない部品調達

 あるとき、自分が勤めていた工場に入った。人だかりができている。

 「わ、問題が起きたのか」

 そう思った。そして、その次に必ず、こう思った。

 「自分が担当している製品の納入が遅れてしまったのか。それでラインが止まっているのか」

 このような恐れを常にいだいていた。人だかりの理由は、まったく違うことが原因だとわかった。部材遅れ等は生じていなかった。そこで私は一つほっとため息をつく。

 直接材の担当バイヤーはいつも、このような恐怖や不安と戦っている。間接材が安穏としているというわけではない。ただ、このような感情は、直接材のバイヤー特有のものだろう。

 おそらく、全国で現在このような悩みにさいなまれているバイヤーは5万人ほどいるだろう。昨今の部材調達の難しさからか、モチベーションが低下しているバイヤーも多いと聞く。

 購買実行のほうがはるかにストレスは高いにもかかわらず、花形は契約業務だ。目立たず、しかも苦労が多い。

 しかし、と私は思う。明けない夜はない。この部材逼迫もすぐに一段落する。目の前の仕事は大変だろうけれど、きっとなんとかなる。ラインが止まっても、それは一人だけの責任ではない。そう考えると、少しは気がラクになるのではないだろうか。

眠れない部材調達に、安眠の日を。

坂口孝則(http://www.co-buy.co.jp/

がんばれ日立製作所

 先日の報道によると、日産自動車の生産ラインがストップしてしまった。理由は、日立製作所(正確には日立の関係会社)のIC調達遅れだという。外資系半導体メーカーは、そのICを期限どおりに日立製作所に納入せず、結果としてSCM全体の機能停止に陥ってしまった。

 この「事件」に関する的外れな議論は次のとおりだ。

  • 系列外取引を進めた日立製作所の調達・購買方針がいけなかった
  • 日産・日立製作所の連携やサプライヤーマネジメントが上手くなかった
  • 近年のコスト削減要請が悪しき影響を与えた

 これらのすべてが意味のない議論のように、私には感じられる。まず、系列外取引がいけないというのであれば、ほとんどの企業は系列外から重要部品 を購入している。電子・電気チップ部品を除けば、その多数は海外製品を調達している。しかも、それはどうしようもない産業構造に基づく。

 サプライヤーマネジメントが失敗しているといいうのであれば、何が失敗しているのか。それが明らかではない。私が知っている限り、両者ともサプライヤーマネジメントは日本のなかでもっともすぐれた取り組みをしている。

 また、コスト削減要請と納期は関係がない。これは生産の遅延であり、コスト削減が生産現場に直接与える影響はない。というか、コスト削減要請がいかに生産遅延に結びつくのか、それをICの生産工程にあてはめて説明できる人がいるだろうか。

 私は、むしろ、この事件を「たまたま」の遅延と考える。日産・日立の責任ではない。

 もちろん、その「たまたま」を予測して管理することも大切だ。しかし、カスタムICの「たまたま」な納期遅延までをもすべて事前対策することは不可能だ。よく「事前対策が必要」という人がいるが、車載用の無数のカスタムICすべてを2社購買にできる人はいないだろう。

私には、この事件が教えてくれるものは、ある種の「諦観」と、事後処理の大切さではないか、と思われるのだ。

坂口孝則(http://www.co-buy.co.jp/

部材逼迫という新しくて古いテーマ

 部材逼迫。

 これが昨今の調達・購買の問題であることは間違いない。最近は誰に会っても、「部品が入らない」「部材の調達が困難だ」と聞かされる。なるほど、 コスト削減などという言葉も、「モノが入手できない」というリアルの前には、二の次らしい。部材の安定調達は、調達・購買の基本であり、これができていな ければ、何の施策も弊履だからだ。

 昨今の部材逼迫についての理由はいくつか考えられる。代表的なものはこの三つだ。

 1. 中国などの新興国の需要が盛んになり、日本企業向けの数量が減っている

 2. 他国が日本企業以上の価格で部材を買い取るため、日本企業が「買い負けしている」

 3. 設備投資が抑制されていたために、生産量が需要に追いつかない

このようなものだ。もちろん、この三つは独立しているわけではない。複雑に絡み合って、それぞれが影響し合い、現在の異常な部材逼迫をもたらしている。

 企業が部材を入手できずに生産ラインをストップさせてしまうという事態も起きている。第三者はこれを、単純な理由に落とし込もうとするけれど、それほど物事は簡単ではない。

 たとえば、2.の買い負けについて、日本企業の影響力低下を理由とする人がいる。しかし、資本主義社会においては、(契約に違反しない限り)誰に 販売しても良いはずだ。このクールな視点に立てば、単に日本企業は資本力の点で負けを喫したにすぎない。この解決策は、日本企業の資本を増強して他国に勝 てるようにするしかない。

 そして、もう一点。

 日本企業の調達・購買部門は、納期を間に合わせるために、「臨時的なコストアップ」を許容することはない。正確には「ない」のではなく、「建前上 はない」。現場ではそのような取引が行われている。しかし、全社的にはサプライヤーに追加金を与えて、それによって納期を間に合わせることなど「とんでも ない」とされている。

 これまでの、その態度は正しいのだろうか。時間を金で買うということは、関係性を重んじる日本企業の発想にはなかっただろう。しかし、このままで良いのか。私は肯定も否定も保留しておく。

 ただ、納期確保についての、海外企業との差異を述べてみた。日本企業はどうするべきだろうか。

坂口孝則(http://www.co-buy.co.jp/

 先日、食品メーカー大手が中国に食品生産を一手に任せ、それによるコスト低減を図ると発表した。ここから書くことは支障があるために、固有名詞を省いておく。私が考えたのはこのようなことである。

  • いま日本では農業ブームが巻き起こっている。しかし、やはりこのブームは、個人趣味のブームということであって、産業にすることは難しい
  • もちろん、日本産の食料が美味しいことは否定しない。しかし、日本で農業に従事するということは、コスト高を招く。やはり日本で農業をしても、コストに見合わない
  • もちろん食料自給率を上げるにこしたことはないが(ちなみに食料自給率はカロリーベースで計算をするため多々の問題を内包している)、経済的な便益を享受するためには海外に農作物生産を委託した方がいい

ということだった。

 経済学では比較優位という言葉でリカードがだいぶ前に論じている。日本は農業が比較優位な産業ではない。とするならば、海外に農業を任せて、自分 たちは違う産業に注力するという選択もあっていい。しかし、「食料自給率向上を!」と叫ばれる日本にあっては、なかなかそのような議論が起きない。

 もちろんリカードの説にも批判はある。しかし、大筋で間違ってはいない、と私は思う。経済理論はたとえ、批判を招くものであっても、長期的には正しさが証明される。

 食品大手は、食料自給率UPの叫び声のなか、やはり海外への委託を選択した。それは建前ではないリアルな事情によるものだ。

 この現実に何を思うか。私は、海外農作物の安さとともに、経済学の呪縛を見るのである。

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 衝撃的なニュースといってもいいだろう。先日、韓国で開催された「国際輸送機械部品産業展(Global TransporTech)」におけるアンケートのことだ。そのイベントにはフォルクスワーゲンやベンツ等の世界大手自動車メーカー250社のバイヤー 300人が参加したようだ。

 そのアンケートは、大手の海外調達状況について、ならびに韓国の自動車部品メーカーについて聞いている「海外部品の輸入を促進する」‥‥‥この結 果は驚に値しない。しかし、問題は韓国と日本の自動車部品メーカーに対する感触の違いである。大手自動車メーカーのバイヤーたちは、「もっとも信頼できる 自動車部品調達先」として「韓国」と答えたという。それは「日本」という回答を大きく引き離している。

 もちろん、これにはいくつかの留保が必要だろう。

  • そもそも韓国で実施されているイベントのため、その国寄りの回答になってしまいがちになる
  • 韓国に実際に来ているバイヤーたちなので、韓国に優位な回答になってしまう
  • 日本円と韓国ウォンがEUROに対する為替は一定ではない

という留保を必要としたとしても、韓国と日本のメーカーの違いが鮮明に出てしまった結果のように思われる。これまで「ものづくり大国」を標榜してきたはずの日本は、いつの間にか韓国に追い抜かれてしまったというわけだ。

 これは韓国が日本を差し置いて(良い意味で「差し置いて」と表現している)原子力発電設備を受注したことからも明らかである。日本のものづくりは、いつの間にか韓国の背中を見る立場になってしまった。

 おそらく、韓国の優位さには日本製造業者のOBが大量に流れていることにもあるだろう。品質のプロが日本から韓国に流れれば、当然韓国の製品の品 質はあがる。そして、国民教育もそうだ。国民教育は国民国家の戦略が色濃く反映する。韓国の教育は一人ひとりの労働者に、かつての日本がそうだったよう に、愛国・愛社的な影響を与えている。日本の現状と比べて、会社の実力に差がつくのは当然だろう。

 この結果を前に私たちはどうしたら良いだろう。それを考えることは単に国際競争力の構築、などという言葉で終わらせることのできない、一つの宿題なのである。

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エンジンが消えた工場

 先日の報道によると、トヨタ自動車はインドの部品工場でエンジンを生産するという。ついにエンジンである。先進国であればエンジンの製造は難しくない。しかし、このセンシティブなパーツは、新興国となるととたんに難しくなる。これがこれまでの業界の常識だった。

 しかし、トヨタ自動車は2010年末発売の小型車については、ついにエンジンのインド生産を開始する。これはかなりエポックメイキングな出来事で ある。ただ、このこと自体を報じるメディアはさほど多くはない。いつだって大きな変化はこのような小さな動きから始まるものかもしれない。

 おそらく、日本から指導者が訪れ、現地人スタッフにさまざまな指導を実施するはずだ。それが簡単だとは私は思わない。しかし、インドスタッフが生 産することは不可能だとも思わない。すぐ近い将来に、インド品質レベルが先進国レベルになるだろう。いつだって技術の移転とはそのようにして広がってきた のだ。

 この記事のタイトルは「エンジンが消えた工場」とした。

 もちろん、すぐに消えるわけではない。しかし、日本技術の結晶と思われてきたエンジンがもはや日本を飛び出す日は近づいている。製品は、その国特有技術のものを産み出しても、いつか後進国が追いついてくる。先進国は常に新たな特有技術製品を生み出す宿命にあるのだ。

 では、日本のものづくりの特有技術製品とは何だろうか。きっと、自動車業界にいる人であれば、ハイブリッド技術だというだろう。あるいは、電気自動車技術と語る人もいるだろう。なるほど、それらの技術はたしかに後進国から頭一つ飛び出ている。先進国の中でもダントツだ。

 ところで、その次の技術は――?と問うたときに、なかなか一手がない。インドはエンジンを作るまでになった。ハイブリッド技術だって時間の問題だろう。その次は何か。これは単なる生産地移管ではない。地殻変動を示す、一つの象徴なのだ。

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防衛庁の調達改革

 防衛省が調達改革を開始するという。防衛庁は、防衛品の調達改革を推進するために、民間の有識者を交えた研究会を設置した。調達品単価のアップ対策や修繕費低減のために、調達改革が必須だという。

 まず申し上げたい。

 私を呼んだほうが良い。一応、調達・購買の領域の人間ですから。

 半分冗談、失礼しました。

 しかし、この国の政策を見ても、調達品の改善がどの領域でも必須なのだなという感がある。これまでであれば考えられなかったことだ。

 しかも、この防衛庁の調達品改革は、さまざまな領域(流通や原価計算、コスト抑制等々)の叡智を集結して推進するという。ということは、まさに調達・購買関係のプロフェッショナルが必要ではないか。

 これまで日本では調達・購買という領域は日陰の領域だった。世界には大学に「調達・購買学部」まであるが、日本では浸透度はまだまだだ。

 この防衛庁の取り組みが功を奏せば世間的な注目もあがっていくに違いない。その意味でも、この防衛庁の調達改革には否が応でも注目せざるを得ない。

 年末になると「予算が余ったから、何でもいいから使ってしまえ」という役所もまだまだあると聞く。しかし、一部ではこれと異なった動きも出始めている。

 そこでもう一言を申し上げたい。

 ねえ、防衛庁さん、無料でも大丈夫ですから私を呼んでみませんか。その類の調達・購買経験ありです、私。

 あ、すみません、何度も。

 でも、これはけっこう本気なのだ。

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ダイハツ自動車へのエール

 ダイハツ自動車は先日の発表で関係者を驚かせた。ガソリン車で最高水準の低燃費を発表したのだ。名称は軽自動車「e:S(イース)」。来年中にも発売し、国内市場に投入。その後も、新興国へ販路を拡大していくという。

 そしてもう一つの驚きがあった。その会見のときに、伊奈社長は今後、「新車発表のたびに、車両に対する調達改革の寄与度を発表していく」と自社のサプライヤーに宣言したのだ。

 同社は11年度にコスト削減30%を目指している企業である。さすが外部に対する牽制も忘れていない。これまであまり明確なサプライヤー寄与度を発表することは憚られた。しかし、この宣言は調達改革についての「真剣」度が伝わってくる。

 同社は国内サプライヤーのみならず、海外サプライヤーであっても採用を拡大検討していくという。こうなると、国内サプライヤーも同社と同様に真剣にならざるをえないだろう。

 おそらく、日本製造業が生き残る道は三つだろう。

 1. 高付加価値製品の開発

 2. コスト安価な調達品の採用

 3. 人員の海外シフト

 この、凡庸な、そして繰り返されてきた三つの手法。ダイハツ自動車は上記のうち1.2.を狙ったものだ。

 同社が3.までを狙っていくかどうかはわからない。しかし、まずは1.2.の成果を出していかねばならない。これまでコスト削減は「できれば良い もの」だった。しかし、これからコスト削減は「できなければ企業存続が危ういもの」になった。これは一つの大きな潮流の変化である。

がんばれ、と私は遠い地からエールを送っている。

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高速道路無料化は優れた施策なのか

 2010年の6月28日より一部で高速道路の無料化がはじまった。政権の公約がどうであれ、私は無料化に反対している。

  • 先進国のトレンドは交通量に応じて課金する、あるいは課金の金額を変えるシステムであること
  • 無料化による自動車交通量増大が予想され、環境に対する影響があること(公共交通機関の利用が少なくなる)
  • 物流業者に影響が出る

 このような理由からである。もっとも神経を尖らせているのが物流業者だろう。一般人の交通が多くなれば遅延が予想される。目的地に到着するのが遅れれば、それは仕事を失うことを意味するから、過敏にならざるを得ない。

 私はあまりCO2削減についての議論はしたくないけれど、交通量の増加がCO2増加につながることは間違いないだろう。

 このところ共同配送についてのニュースをよく目にする。共同配送は異メーカーが物流を統一することでコストだけではなく環境対応を狙ったものだっ た。せっかくこのような取り組みがなされているのに、高速道路無料化で絶対量を増やしてしまうのは時代に逆行していることにもなる。

 日本では自動車の「乗り合い」という文化も根付いていない。しかし、公共交通機関はかなり発展しているといってよい。その優れた点を利用すること。これが必要だと思うのだ。

 高速無料で遠出しようとしていた人には、ごめんね、ですが。

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 先日、ニュースを見ていたらアップル流のサプライヤー管理の優位性を述べていた。曰く、技術力のあるところは、技術的のないところと区別して管理しているという。具体的には、前者にはコスト削減要請を緩めて、後者には通常通りのコスト削減要請を行っているという。

 私にはコスト削減要求率に差をつけることが素晴らしいことかはわからない。私は、技術力に応じてではなく、製品特性に応じて(すなわち製品の工程特性に応じて)コスト削減要求率は変えるべきだと思う。

 しかし、である。このアップルのやり方が、現場バイヤーの直感とあっていることも事実だ。現場のバイヤーは「すべてのサプライヤーにまったく同じ コスト低減率をお願いするのは無理があるよなあ」と心では思っている。技術的に優れているところが供給「してくださっている」のであれば、高い要求ができ ないことも普通だ。でも、上司からは要求されるので、しかたがなくやっているのである。

 だから多くのバイヤーが「そりゃいいよなあ」と思ったに違いない。自社のやり方と比べて、アップルのやり方が当然だと感じているからだ。

 私はアップル流のやり方が世界を制覇するかどうかまではわからない。ただ、日本企業も、サプライヤーに応じた緩急をつけねばならないだろう、とは 思う。現在は、関係会社かどうかとか持分法適用かどうか、とかしか考えられていない。その管理メッシュをより細かくするのである。

 より具体的には付加価値分析によって、限界利益を明らかにし、コスト削減要請率に差をつける......などの方法があるだろう。企業独自であれ、その緩急のやり方について議論を深めねばならない。

 そうではない限り、いつもの光景がずっと続くことになる。それは、バイヤーも無理だと分かっていながら「今年も5%下げてくださいよ」と依頼し、サプライヤーもいつもの儀式とわかって「はい。鋭意努力します」という、あの茶番劇のことだ。

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日本には何が残るのか

 先日の報道によると、大分キヤノンが部品仕分けを中国に全面移管するという。驚いた。「事業仕分け」ではなく「部品仕分け」である。最初は、「必要な部品を洗いなおしたら、中国製のものだけでよくなった」という意味かと思った。

 しかしほんとうの意味は、ピッキングのことであった。現在は、中国から輸入したものの何割かを北九州で仕分けて、それを各県に送っているという。それを、全面的に中国でわけてもらって、直接そこから各県に送ることで物流費を削減するようだ。

 なるほど、ここまできたか、という感は否めない。

 おそらく、この物流費に目をつけたことは今後の嚆矢となるだろう。付加価値が比較的低い、この仕分けのような作業は中国に限らず、さまざまな新興国に移っていく可能性が高い。報道によると、中国の作業の熟練化があったようだ。

 こうなると、経済学が指し示す通りである。新興国は常に先進国に技術的に追いついてくる。「この仕事は移管できないだろう」と思われていた作業 も、いつかは新興国に移っていく。金銭的なインセンティブは、どこまでも安価な国を求めてさまよい歩く。この大分キヤノンの動きはコスト低減の観点からは 賞賛されるべきだ。

 ここで、話はミクロからマクロに移る。では、日本に残る産業は何なのだろう。

 ややここは悲観的にならざるを得ない。ミクロでは新興国に作業を移管したほうが良いに決まっている。しかし、マクロな観点からは必ずしもそうでは ない。日本全体を考えたときに、単純作業の多い製造業以降のもの--、「ポスト・製造業」の--、潮流はまだ出てきていないからだ。

 おそらく教科書的にいえば「付加価値の高い産業に移行せよ」ということだ。製造業であれば、他国が真似できない優位性をもった製品や産業分野に移行することだろう。しかし、それは簡単ではない。

 このような報道を見るたびに考える。「自分は代替できない仕事だろうか」と。そして「代替されるときに、自分には何が残るだろう」と。

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長浜キヤノンの凄い技

 「Fプロジェクト」を知っているだろうか。もし知らなかったら、あなたは「モグリ」である可能性が高い。もちろん、それは調達・購買 という業界のなかで、かもしれないけれど。

 この「Fプロジェクト」とは、長浜キヤノンが取り組んできた調達・購買改革のことだ。しかも、コストの低減(値下げ)ではなく、生産効率を高める ことによってほんとうの「コスト削減」を達成しようとしたものだ。

 具体的には何か。DBR(ドラムバッファーロープ)という言葉を聞いたことがあるかもしれない。あるいはTOCという言葉でもいい。生産現場にお けるボトルネックを抽出し、その編成効率やサイクルタイム、リードタイムを改善するときに使われる言葉だ。これらの活動を、「Fプロジェクト」ではメー カーを巻き込み、自社を含めた大きなSCM全体でやってしまったのである。

 生産効率を高める--。口で言うのはたやすい。しかし、現場に落としこみ、実際に成果をあげることは難しい。この「Fプロジェクト」では、成果を あげている。その成果はたとえば部品メーカーで平均3週間のリードタイムだったところを、2週間ほどに縮めているという。

 御存知の通り、工場とは固定費の塊である。固定費の塊から生み出される製品数が多ければ多いほど一つあたりのコストは下がる。また、短時間で生産 できればできるほど、コストは低減していく。リードタイムが三分の二になっているとしたら、そのコスト削減効果は恐ろしいものだろう。しかし、それをやっ てのけた。

 私は個人的に、このプロジェクトを主導していた人を知っている。リードタイムを短くするということ、不良率を低減させるということは並大抵のこと ではない。現場を一つひとつビデオに撮り、改善案をずっとずっと考え、地道に短縮していった結果だという。

 日本のお家芸はモノづくりだけではない。このような地道で、かつ愚直な行為を繰り返すことで、大いなる成果に結びつけること――。次世代に伝えて いくべきは、ほんとうはこのような「徹底した真摯さ」ではないか。

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コスト削減に潜む大いなる矛盾

 先日の報道によると、日立製作所はIBMをお手本に総額2300億円を削減したという。主に間接費(出張旅費、賃貸料、電気料金等) を聖域なく削減していった結果のようだ。とくに大企業になればなるほど関係会社も膨大になってくる。それぞれが仕様をさまざまにし、ばらばらの契約体系を とっている。同じ調達品であっても、グループ会社によって異なる仕様、違う価格、違う条件で買っているのが当然だ。

 その状況で統一基準を定め、調達活動(あるいは間接費の支出)を実施したとしたら、それは大きな効果になるだろう。まとめることによる交渉も容易 になる。私はIBMのこの手法が別に新しいものだとは思わない。ただし、肝要は「徹底すること」にある。支出管理を徹底しグループ会社内で同一調達基準を 浸透させることができれば、それは価値があることだろう。

 ところで、私が常々このような報道に接して矛盾と感じることがある。現在の日本では「他社類似商品を大量生産する」モデルを目指していない。それ は建前かもしれないけれど、「他のどこも作れない商品を創る」ことを目指している。これにさほど異論はないだろう。

 しかし、日本企業はコスト削減のために、調達品については「同一品」を要求しているのだ。これは面白い矛盾であるように、私には感じられる。つま り、「自社商品はオリジナル」であるが、「外部調達品は凡庸なものを」ということである。おそらく、他社と似たようなものを作っている企業は価格競争に巻 き込まれている。だから、安く調達することはできるだろう。

 私の興味はその先にある。

 他社と同じような凡庸な調達品を元に、ほんとうにオリジナルなものができるのだろうか、ということだ。もちろん「できる。組み合わせにオリジナリ ティがあるのだ」という返答があろう。その通りだ。凡庸なものであっても、いかに組み合わせるかにオリジナリティが滲む。

 しかし、とも思うのだ。それができるところは良い。ただ、それこそ発想が「凡庸」なところは、完成品も凡庸なものになるのではないか。「単一品」 「同一品」「汎用品」......これらを調達しようとし続けている日本企業の、完成品のオリジナリティは消えないのか。

 私は日立製作所が凡庸な商品しか生み出せなくなるといっているわけではない。むしろその逆に、日立製作所を応援している立場である。むしろ、この 流れが加速した時の日本全体への影響について危惧している。いや、危惧よりもそれは、「懸念」といったほうが良いかもしれない。

 私が考えていることはそのようなことだ。

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CO2を劇的に削減するには

 先日NECグループが発表した「環境経営行動計画」によると2030年度までには5000万tのCO2削減を目指すという。同じく、 ミニストップも新店舗開発でCO2を33%削減するというニュースが目についた。

 この2社ばかりではない。最近では、コストよりもCO2を削減することに注目が集まっているかのようだ。コスト削減何割というよりも、CO2何割 削減という言い方のほうが、「ウケ」が良いのも事実だろう。

 根本的に考えると、CO2をもっとも減らすのは次のとおりだ。

 1. 生産活動を自粛する

 2. 生産一単位ごとのCO2を削減する

 3. 代替エネルギーを利用する

 もっともCO2を減らす手法は1.であるけれど、それは言ってはいけないことになっている。以前、「年間CO2排出量を劇的に削減した」企業が あったが、実はそれはリーマンショックによって生産活動を縮小した結果だった。皮肉なことで、経済活動が縮小されれば、CO2など簡単に削減できることを 示してしまった。

 これは値上げ抑制の議論にも通じる。CA(コスト回避)とCR(コスト削減)は異なる。100円の材料が10円値上がりしそうなところ、100円 のままにすれば、それはCAだ。しかし、100円のものを90円に下げることができれば、それはCRとなる。

 CO2削減の議論も、「生産活動が縮小してしまったがゆえの自然減」と「技術革新による削減」を区分けして述べなければいけない。ただ、現時点で は各企業のものは(ちゃんと計算しているところもあるものの)CO2総量のみを述べたものが多い。

 生産活動と生産技術革新と代替エネルギーによるものと。これら三つがどのように作用してCO2削減をもたらすのか。それが知りたい。

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いすゞ自動車の先端的取り組み

 報道によると、いすゞ自動車は中国に調達基地をつくるという。中国で調達したものや合弁先企業の部品を、さらにそこから東南アジア工 場に送るようだ。

 中国で調達するだけではなく、そこにヘッド機能を持たせて、他国にまで送る。簡単なようだが、実施することは難しい。品質保証させるだけでもさま ざまな困難がある。おそらく決定までには多くの支障があったに違いない。

 これまで中国から部品供給を実施しようという試みは、各社持っていた。しかし、そこで問題となるのは三つだった。

  1. 中国人先導での品質保証や納期保証が難しかったこと

  2. 中国工場をまわすことが精一杯で他国への実務ができなかったこと

  3. 中国サプライヤーと他国サプライヤーの比較検証ができていなかったこと

 これらについて、(おそらく、であるが)問題解決の糸口が見えたのだろう。特に、1.の人材育成はもっとも悩ましい問題だった。日本レベルの品質 を自発的に確保・維持する現地人育成にはどこも手を焼いていたからだ。

 これから、中国が独立してセントラル業務を行うことも予想される。そのときに、日本人の役割はどうなるだろう。中国の現地化が進めば、やがて日本 人の役割が終わることになるかもしれない。それは指導という形で伝播させていた日本ものづくりの要諦が、中国をはじめとする各国に浸透しつくすという意味 では意義のあることだろう。

 しかし、その果てにはどうなるか。

 私にはそれが、日本製造業が次の付加価値を真剣に求めだすきっかけになるとしか思えないのだ。残念ながら、その新たな付加価値はまだ見えていな い。しかし、もう残された時間はほとんどない。

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経済学の呪縛

 先日報道されたホンダに続いて、台湾の大手電子部品メーカー鴻海精密工業も従業員に対して賃上げを実施するという。試験等に通る必要 はあるようだが、一か月あたり300ドル弱の賃上げになるようだ。

 ホンダの場合は自社工場の賃上げだった。この鴻海精密工業はアップルなどの委託先であり、「アップルの委託工場が賃上げ容認」という形で報じられ た。アップルが全面に出ていたが、これはアップルの工場ではないため、ホンダの例とこのアップルの例は異なる。

 また、もちろん、組立時間削減やその他の生産技術進化もあるため、この賃上げがダイレクトに製品コスト上昇を招くとは断言し難い。それに、適切な 水準であれば、この賃上げはむしろ歓迎すべきことかもしれない。

 しかし、である。

 やはりいくつかの報道を聞いて感じるのは、「経済学の呪縛からは逃れられないのか」ということだった。これまで中国万能論者は、中国には無数の労 働者がいるので賃上げは起こらないだとか、上方硬直性があるとか、そのようなことをあげていた。

 ただやはり、中国市場の労働価値が上がっていけば、当然ながら労働賃金もあがっていくことになる。中国が提供する製品レベルが上がり続けると、そ れは中国人労働者の賃金があがることを意味する。国際経済学が証明した理論そのままだ。

 各社はポスト中国を目論み、次なる労働力の確保を狙っている。それはインドだ、という企業もある。やや遅れた感はあるものの、ベトナムだ、という 企業もある。そして、インドもベトナムも、賃上げが起こったあとに、さらに次の市場に移っていくだろう。

 経済とは静的なものではない。きわめて動的なものだということを、中国人労働者の賃上げ問題があらためて教えてくれる。

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 再び同じことが起きようとしている。しかも、一度目は悪夢として。二度目はまたしても悪夢として。

 アメリカがかつて「ジャパンアズナンバーワン」と呼んだとき、日本人は自分たちの栄華を疑わなかった。「ジャパンアズナンバーワン」とは「ジャパ ンイズナンバーワン」とはいえない、微妙な立ち位置を表現していた。日本人は誇りに思ったけれど、すぐにそんなことを言う人はいなくなった。ナンバーツー 以下になってしまったからだ。

 韓国が日本に羨望の眼差しを投げかけているとき、日本人は「アジア勢には負けないだろう」と思っていた。しかし、今はどうか。某原発の受注でも韓 国に敗北を喫し、日本のお家芸であったはずの各産業(自動車・電機)でも敗北を喫し始めているではないか。

 韓国企業の強さはなんだろう。

 調達・購買である、と断言するつもりはない。しかし、調達・購買の領域においても差があることをここに明記しておきたい。韓国では、日本人の想像 以上に調達・購買の専門家と資格取得推奨が進んでいる。CPSM等のホルダーは日本より遥かに多く、また先進企業もこぞってそれを教育に取り入れている。

 もちろん、繰り返しだが、調達・購買の領域も一つの例にすぎない。しかし、何か調達・購買が象徴しているものもあるように、私には感じられる。そ れは、これまで定性的に語られてきたものを定型(形)化しようとする「力への意志」であり、間接業務のプロフェッショナル化への欲望だ。

 属人的知識ではなく、形式知へ。暗黙知ではなく、周知されたノウハウへ。そこに至る道程に韓国企業の躍進の秘密があるように思える。

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日本でBPOの波は来るのか

 BPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)という言葉がある。文字通り、企業の一部を外部委託することだ。近年では、欧米でプロ フェッショナル業務のBPOも広がってきている。

 それに対して、日本のBPO業界(という言い方があるのか微妙だが)は、遅々として拡大が進まない。もちろん、日本にBPOという文化がなかった ことに加えて、そもそも業務がブラックボックス化しているために、外部に依頼することができないのだという皮肉まである。

 調達・購買業務のBPOも海外では広がっているという。なるほど、アメリカで出会ったBPO業者たちは皆さん口を揃えて「好調だ」といっていた。 日本が不況と叫んでいた2010年4月のことである。日本だけは世界に取り残されてしまった感が否めなかった。

 また、依然としてあるのが「言語の壁」である。アメリカの企業がインドにコールセンターをアウトソーシングするのは理解できるが、日本人なら直感 的に「日本ではありえないだろう」と思う。それが普通だろう。

 これまで日本企業は重厚長大産業を目指してきた。固定費は上がる。ただし、変動費率を抑えることで、損益分岐点を突破したあとの利益の伸びは大き かった。

 しかし、現在ではさまざまな要求が次々に変わりゆく時代だ。これまでの商品は売れなくなり、次々に新たな商品が求められる。となると、大量生産で マスをターゲットにしていた重厚長大産業は行き詰まる。

 固定費を変動費化し、柔軟な対応を行うこと。それが世界におけるBPO拡大の根底にある。もちろん、重厚長大産業が無効であるとはいわない。しか し、トレンドは脱・重厚長大産業に辿り着こうとしている。

 BPOが拡大するか否かは、日本の産業転換が成し遂げられるかの、一つの試金石になるだろう。あるいは、日本は違った変動費化構造を創りあげるの か。日本以外で広がるBPO化は、それを問いかけている。

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ウォルマートの物流要求

 先日の報道によると、米・ウォルマートは各サプライヤーに対して、物流の一元化を要求したという。ウォルマートが物流を一元管理する ことによる効率化。報道のタイトルは「Why Wal-Mart Wants to Take the Driver's Seat」であった。なるほど言い当て妙である。

 これまで同社は各サプライヤーに対して強い要求を繰り返していたといわれている。値引き交渉もそうだし、量的な確保もそうだ。私はこのことを否定 したいとは思わない。ウォルマートが絶大な販売量を誇っていることも事実だ。むしろ、サプライヤーにとってもウォルマートはありがたいお客であり続けてい るし、両社に利益をもたらす構造であることには違いない。

 今回はウォルマートの物流一元化の話である。ウォルマートはサプライヤーの物流を一元化することにより、

 (1)サプライヤーが商品の製造に専念できるメリットがある

 (2)燃料などを一括交渉することでコストメリットがある

等を狙っているという。

 小売の世界と製造業の世界は同じではない。しかし、このような小売の世界での取り組みを見ると、さすがに小売業が進んでいると思ってしまう。もち ろん、製造業でもミルクラン方式を取り入れているところはある。ただ、そのミルクラン対象サプライヤーはさほど多くない。それをウォルマートは大胆に各社 に広げようとしている。

 すでに200億円弱を削減したといわれるウォルマート。物流の次はどこへいくのか。いろいろな批判はあれど、まだウォルマートから目が離せなさそ うだ。

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日本車とは何なのか

 先般の報道で、トヨタ自動車が米工場で生産するエンジンを日本に逆輸入すると報じられた。また、トヨタ自動車は、東南アジア工場から 中東への輸出も拡大するという。同じく、日産自動車はアジアで増産するともいわれた。ものづくりの拠点は、日本から一気に海外へとシフトしたようだ。

 この展開は想像できたものだ。日本政府に対して産業界は「円安にしてくれ」と圧力をかけている。しかし、その一方、(良い意味で)したたかな企業 は円高対策として生産工場の海外移管を進めてきた。

 かつて日米貿易摩擦なるものがあったと歴史はいう。日本車がアメリカ車を食い尽くす、と。しかし、いまではほとんどそのような議論は目にしない。 もちろん、日本という国家の衰退もある。ただ、その議論が消えた理由は、もう「日本車」というものがアメリカから姿を消したからである。そしてアメリカ車 というものもなくなったからである。

 どういう意味だろうか。それは、日本の完成車メーカーの生産工場はアメリカに根付き、雇用者のほとんどは現地人になったからだ。それに引き換え、 これまでアメリカ車を作っていたメーカーのほとんどは主要工場をカナダや南米などに移管してしまった。アメリカ人にとっては、もはやホンダやトヨタこそが アメリカ車になっているのである。

 ここから考えるに、「日本自動車メーカーが海外生産を加速」という見出しにどれほどの意味があるものだろうか。もはや、日本自動車メーカーは株主 が日本にいるだけで、すでに実体は海外メーカーと同じである。そう見ると、単に最適生産をしているだけのことではないのか。それはクールすぎる見方かもし れない。ただ、もはや「日本車」「アメリカ車」という区分が意味を持ち得なくなっていることだけは指摘しておきたい。

 そして、もう「○○国生産」という言葉すら意味がなくなる時代が、すぐそこまで来ている。

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日立製作所の大きな挑戦

 先日の報道によると、日立製作所が「鉄鋼や非鉄金属など原料価格の高騰に備えた調達改革」に着手するという。もちろん、このこと自体 はまったく新しい取り組みではない。他の企業も取り組んでいる。

 ただ、日立製作所は「現在採用している全素材の4分の1を今後3年間で他の素材などに切り替え」、かつ「海外調達比率を5割に引き上げる」とまで 宣言している。調達費は2000億円ほどの削減を狙っているという。

 重電を含む企業が、それほどの大胆な宣言をしたことは珍しい。民生品であればよいところを、重電である。重電は多くの人が知っている通り、規格や 審査や指定品など、さまざまな桎梏がある。

 おそらく海外調達といってもたやすいものではないだろうし、材料の変更などはさらに困難がつきまとう。現場ではさまざまな施策が練られているに違 いない。それに、反発もあっただろう。これをやると宣言したのである。

 これまで単純なコスト削減がメインだったところ、このような「現在採用している全素材の4分の1を今後3年間で他の素材などに切り替え」るという のは、劇的な開発購買の進化を必要とする。おそらく、開発・設計部門と調達・購買部門はすでになんらかの合意を形成しているはずだ。

 これまで材料置換とは、VA/VE観点での設計主導が大半だった。それを今度は調達・購買部門が先導してこのコスト削減を推進しようとしている。 もしかして、と私は思う。この不遇の時代は、調達・購買部門が社内プレゼンスを上げる好機となる時代ではないかと。

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 先日、ホンダ部品工場を舞台にしたストライキが報じられた。これを書いている時点で2週間が経過している。中国人労働者は、50倍と もいわれる日本人との給料差に不平不満を抱き、それを爆発させた。

 私は50倍という数字が「ほんとうの倍率」なのかを知らない。また、やや違う事実を知っているので、この数字を元にした議論は避けておこう。また、報道がこの給与格差について何の意見も持ち合わせていないことに違和感を抱く。果たしてこれを報じたメディアは、その格差について妥当だと思っている のか。あるいは、妥当ではないので是正せよと思っているのか。

 私はグローバルに展開する企業を応援したい立場である。なので、ホンダの、日本人と現地人との給与格差は「しかたのないことだ」と思う。企業は経済問題を基本にして動く。だから、たとえ50倍であったとしても、日本人をそこに置く価値があるのであれば置くだろう。また、そのような給与を与える必然 性がなければ置かないだろう。

 実際、各グローバル展開企業の駐在員は減少していると言われている。各国の技術が進めば、あるいは人材育成が進めば、それ当たり前のことだろう。 しかし、それでもなお日本駐在員(米国企業であれば米人駐在員)がゼロになることはないだろう。

 私は、このストライキが「口コミ」で広がったということに注目する。しかも、その「口コミ」が流布した給料格差はしっかりとした証拠をもったものではないらしい。ただ、それでも「口コミ」のみでこのような事態に発展する。

 調達・購買の世界では、「ダイバーシティーマネジメント」という言葉が流行している。各国の文化的背景、宗教的背景......等々を理解し、それを調達活動に反映していこうとするものだ。これは口でいうのは易しいが、実践することは難しい。それに、そのような言葉は各国でストライキやら暴動やら が起こらないと、なかなか認識されないことでもあるだろう。

 私はこの事件を嚆矢として、各グローバル企業がどのような「ダイバーシティーマネジメント」に着手するかに注目している。事象をふたたび繰り返さないこと。そんなカイゼンにこそ、日本企業の強みがあるからだ。

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中国企業の買収はいけないことか

 あの経営再建中のアパレルメーカー「レナウン」が中国企業と資本・業務提携を結ぶという。結婚相手は中国のアパレルメーカー「山東如 意科技集団」だ。報道では、「いよいよ中国資本の日本企業買収が本格化してきた」という。

 日本企業が中国企業を買収したならば「当然のこと」も、中国企業が日本企業を買収することは「あってはいけないこと」らしい。私はこの違和につい て、何度も述べてきた。中国資本が入ることがなぜいけないのか。むしろ、レナウンは経営再建中だったはずで、そこに日本企業(日本資本)のどれほどが手を 差し伸べたのだろう。むしろ、ブランドを持続させてくれる「ありがたい存在」ではないか。

 アメリカのCEOのなかには、自社を買収させて、その後に合併した企業のCEOに上り詰めた例もある。当たり前だろう。優秀な人であれば、そのよ うな道が拓けているのも当然だ。むしろ、日本企業の経営者であっても、ほんとうに効率的な経営をしているのであれば、合併も怖くないはずであり、むしろ中 国の巨大資本を「使うことができる機会」ですらあるはずだ。

 社員にとっても同様だ。これまでもし非効率的な資本運営が行われていたとすると、効率的な資本の算入はむしろ歓迎するべきことだろう。それはいつ か給料にも反映される。資本の色が日本なのか、外国なのかはさほど問題ではない。

 もちろん、この日本で「外国資本歓迎」とはなかなかいえたセリフではない。グローバル化とは日系企業が海外で活躍することのみを示しており、海外 企業が日本で活躍することなど想像されていないからだ。

 中国企業あるいは中国資本の日本流入で試されているのは、もしかすると日本人の想像力ではないか。

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 この前報じられた内容によると、第一生命保険は事務社員を中心として、トヨタ生産方式(TPS)を導入するという。事務作業のムダを できるだけ排することで、事務時間を15%程度削減することが狙いだ。トヨタ方式で事務効率を高めようとしている。

 私は事務作業を徹底して削減することには全面的に賛成である。これまで、日本の労使間では、「社員を長時間使っても安い」という事実があった。欧 米の社員に比べても、社員に支払う残業費が安かったことから、社員はだらだらと会社に残ることが定常化していたのだ。

 この状況が生み出したのが、「長時間勤務に拘らず時間あたりGDPが低い」日本という国家であった。長時間労働が、高い効率性や生産性を生んでい るのであればまだ良い。でも、実際は長く働くし報われないというものだった。日本人の(経営者を含む)労働者のうち、年間数カ月の休みをとっている人など ほとんどいない。

 しかし、あえて問題点を指摘すると、このように事務作業の効率化を目指していた企業が、実際のコストに削減したかというと、なかなか例をあげるこ とはできない。私が指摘するまでもなく、社員のコストは「固定費」である。だから、その「固定費」は必ずかかってしまうものであり、時間を短くしたからと いって固定費の削減につながるものではないからだ。

 ゆえに、私はこのような取り組みがムダだといいたいのだろうか。

 そうではない。固定費は削減できないかもしれないが、残業費(変動費)は削減できることは事実だ。それに、(残業費がほしい、という本音はあるだ ろうけれど)社員が早く帰宅することによるメリットは大きい。それは21世紀型の「ワークライフバランス」を実現させるからだ。「ワークライフバランス」 とは、生活と仕事をうまく両立させる考え方であり、日本以外の先進国では当たり前になってきた。

 コストはさほど変わらないかもしれない。しかし、社員の充実度があがれば、この取組はなかなか捨てたもんじゃない。私はトヨタ生産方式によるカイ ゼンを、むしろ生活カイゼンの一環としてとらえる時代がやってきている、と思う。

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 先日の報道によると、グローバル企業のCFO等の71%が「今後1年以内に世界の景気が上向く」と回答したという。これは、2009 年の同調査の18%を4倍ほど上回る結果になっている。

 その一方で注目するべきは、日本の同様調査の結果だろう。日本の財務責任者たちのうち、「景気は回復する」と答えた割合がわずか48%にとどまっ ている。世界は回復、日本は停滞というわけだ。

 もちろん、質問のニュアンスの違いもあるし、日本人特有の「将来へ不安を感じやすい性格」というのも影響しているに違いない。しかし、日本経済の 状況を見るに、たった48%のみが「景気は回復する」と答えたのはわからないでもない。むしろ、48%もそのように答えたのは、多いともいえるのではない か。大半の経営者・サラリーマンたちの実感は「不況真っ只中」であり、とても明るい兆しなど感じ得ないからだ。

 日本人の平均資産は3900万円とも言われる。死亡時にも3400万円ほどは保有している。その多くは不動産(上物含む)である。大半はキャッ シュではない。とはいえ、多額の資産を「持ったまま」死亡してしまうのは事実であり、日本人は「いつか来る危機」に万全の備えをしたまま、資産を活用する ことなく死んでしまう。

 私は日本人の性格的特性のみが経済実態に反映されている、といいたいわけではない。ただし、その要因も一部にあるということを述べておきたい。景 気浮揚は要するに「人々がお金を使うこと」に源泉がある。どんなに世界経済が好景気になろうとも、内需を喚起できない国の将来はとてもあやうい。

 メディアは連日のように日本経済の危機を伝えている。たしかに、内需がしぼんでしまった現在、その「危機」という言葉はふさわしいかもしれない。 ただ--、こんなときにこそ危機を忘れさせるような報道が聞きたい。お金を投資することによる効果と、それによる喜びをこそ、聞きたい。おそらく人生の喜 びのうちかなりの部分は「お金を使いすぎてしまったこと」に形作られているだろうから。

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 最近つぶやかれている「アブないウワサ」がある。中国調達に関わっている人であれば、一度は耳にしたことがあるはずだ。それは、「中 国調達はもうダメになってしまうのではないか」というもの。中国のコストが高まり、もう中国調達するメリットがなくなってきているというのだ。

 どんな国でも生産効率が高まって需要が高まってくると、労働者のコストが上昇してくるのは当然である。だから、中国が同じ道を辿るのは、ある意味 で当然と言える。

 最近、中国人労働者が集まったら話すのは「賃上げをどうやって求めるか」であり「給料の高い企業はどこか」であるという。ただ、給料は下方硬直性 があり、一度上げてしまったらなかなか下がらない。だからどの企業も大幅な給料上昇は認めていない。

 とはいえ年率数%は上昇しているのが現状だ。中国の統計データは残念ながら、あまり信頼に足るものはないと言われているが、関係者からのヒアリン グによると5%程度は上昇している企業もある。

 現在では、企業の内部コストの上昇を、販売価格に転嫁していない(できていない)中国企業がほとんどだから、さほど問題は表面化していない。とは いえ、それは隠蔽されているだけなので、問題が解決したわけではない。アブないウワサは、真実になってしまう可能性もある。

 しかし、考えてみるに、調達コストが安い国がずっと安いはずはない。中国のコスト・トレンドを継続チェックするのは当然だが、中国の経済成長の伸 びを前には、引き続き中国の代替国を探す周到さも忘れてはならないだろう。

 グローバル化の前には、私たちは固定化した調達はできない。流れる川に泳ぎゆくように、世界の推移に追随していくほかはないのである。

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新興国の勃興はほんとうに脅威なのか

 先日の報道によると(帝国データバンク調査)、<新興国企業による日本企業買収、日本経済にとって「脅威になる」が78.1%>とい う結果だったという。たしかにわからないわけではない。海外資本といえば、これまでは米国圏でありヨーロッパ圏であった。それがインド・中国をはじめとす るBRICsに広がり、いまではVISTAと拡充を広げている。

 ヒッチコックの名作映画「鳥」で、人間たちを襲う鳥は共産主義者たちのメタファーだったという説がある。また、映画「エイリアン」で描かれた不気 味なものの正体は、実は赤子(幼児)の隠喩でもあった。共産主義者や赤子が悪者なのではない。そうではなく、人間はよく知らずに、これまで未経験の他者に 対して必要以上の恐怖心をいだくものなのだ。

 その意味で、新興国企業は「鳥」であり「エイリアン」であろう。だから、彼らの資本が日本を覆うことは恐怖以外の何者でもないかもしれない。

 しかし、私は根本的な疑問がある。

  • 日本企業が新興国企業を買収するという報道がなされても平気なのに、その逆がいけない、というのは明らかな差別意識ではないか
  • 日本企業が真に資本効率的な経営をしているのであれば、むしろ資本の増加は歓迎すべき事象である(効率的経営を実践しているのであれば、理論的に 経営者は交代させられることはない)
  •  資本開国以外に日本を救う道はないのではないか

この三つである。

 新興国をエイリアンと見立て、その攻撃から身を守る法案がいくつも検討されてきた。それは、完全に共存を意図せずに排除する方向でしかない。しか し、本来は外国資本を柔軟に受け入れ、日本経済を立て直す梃子とすることが重要であるはずだ。

 新興国の資本参加は脅威である。しかし、それはほんとうの意味ではなく、旧来の日本経営にとって脅威なのだ。

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 先日、嬉しい報道が目に止まった。米調査会社のプランニング・パースペクティブによると、「日米完成車大手6社に対する好感度ランキ ング」(サプライヤーが投票)で、1位はホンダで、2位はトヨタ、3位にやっとフォードが入り、4位は日産だったという。

 これは営業パーソンに向けたアンケートであるために、生産部門や技術開発部門を含めると違う結果になる可能性はある。とはいえ、これが一定の傾向 を示しているとはいえるだろう。

 このアンケートで上位になるためには「コスト削減や品質向上に向けた支援」や「サプライヤーにとっての利益獲得機会」という項目で高得点をとる必 要がある。日系の自動車メーカーの調達・購買部門は、その意味でたしかにサプライヤーに厳しいだけではなく、利益創出の姿勢を持っていると評価できるだろ う。

 同じく、自動車部品メーカーのミツバも、期を同じくして「主要サプライヤー14社に対して生産コスト低減の改善活動を支援する」と発表した。完成 車メーカーからの部品受注量が減っている中、利益減少を川下のサプライヤーに補填させるのではなく、運命共同体の構成員としてお互いにこの時代を乗り切っ ていくという試みである。これはミツバだけではなく、さまざまなメーカーがサプライヤーとともに取り組んでいる。

 サプライヤーを「他者(他社)」とみなすのではなく、自社工場の延長としてとらえる。言葉は悪いが自分の体の一部と解釈するのであれば、サプライ ヤーに対する態度は「交渉相手」ではなく「共存相手」ということになる。日本の自動車産業は、「系列切り」や「徹底競合」の時代を経て、ふたたび手厚い支 援をベースとしたサプライヤーとの「相思相愛関係」に戻ろうとしているのか。

 これは私が以前から主張している「戦略的癒着」の関係に戻ることでもある。確信のある自己流は、いつでも王道に勝る。欧米流の調達・購買において は、サプライヤーをいかに「管理」し「使いこなすか」が注目されてきた。それに対して、古き日本流が米国で再評価されていることは示唆的である。

 もちろん、自動車産業であっても、その調達・購買が1位であり続けるわけではない。ただ、不景気においてサプライヤーとの共存の試みが注目される のはある意味必然であった。調達・購買の潮流とは時代によって移り変わるものなのである。

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 前回は、中国の上海で開催されている万博に参加し、その人の少なさから「中国バブルの崩壊」を述べてみた。私はバブルであると断定は していないものの、そのあやうさについて言及してみたかったのだ。

 現在、資源調達が難しくなっている。それは、サプライ側(=供給メーカー)の問題ではなく、デマンド側(=需要企業・バイヤー企業)の問題である といわれる。すなわち、材料を供給する側が数量規制をしているというよりも、需要があまりに旺盛なので市場価格があがっているというのだ。マクロ経済学的 には、供給曲線の左シフトではなく、需要曲線右シフトということができるだろう。

 そこで、調達・購買の世界でも材料値上げにどのように対応していくかが近年大きなトピックとなっている。要するに、「値上げ要請があったときに、 どのようにするべきか」をみんな迷っているのだ。

 しかし、である。中国経済の現状がバブルであることを私は示唆した。それは、他の新興国も同様だろう。ということは、何が言えるか。それはデマン ド側(=需要企業・バイヤー企業)の勢いも、いつかはおさまるという当然のことである。景気は循環する。たとえ、グローバル化が進む現在にあっても、必ず 世界規模の景気循環はやってくる。だから、需要が旺盛な今、材料値上げだけの対応を考えるのは物事の一方だけを見ていることになる。

 アメリカのSCMの世界では、そこから一歩踏み出し、「材料変動における最適な価格決定理論」を推し進めようとしている。これは、材料値上げ時だ けではなく、材料が値下がりする局面でも、どのように材料価格を決定するかを理論化しようとするものだ。

 バブルは(繰り返しだが、中国経済をバブルと断定していない)、いつか崩壊する。とするならば、バブル崩壊時をも見据えた調達・購買戦略を打ち立 てねばならない。

 そしておそらく、それは――、90年代にバブルを経験した私たちが「歴史から学ぶ」ということのほんとうの意味にほかならないはずだ。

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 上海万博が人気「だという」。なぜ「だという」とカッコでくくる必要があったのか。それは、私が直接現地に出向いて取材してきたから だ。万博近くの駅を降りて驚いた。人がまばらだった。降りる駅を間違えたか? と思うほどだった。しかし、厳重なゲートチェックは、たしかにそこにあっ た。

 手荷物検査を終わらせ、ゲートをくぐる。まず目の前に飛び込んできたのは中国館の真っ赤なシルエットだった。なるほど、中国館の前には人が並んで いた。そこから東に向かい、さまざまな国のパビリオンを見て歩いた。日本館や韓国館、それらの先進国パビリオンには人が殺到しているものの、その他の国に 並んでいる人はまばらだ。

 工事中の道路、缶の並んでいない自動販売機、ベンチに寝転がる係員たち。まだ完成半ばのパビリオン。あるパビリオンの中には、何も入っていない ショーケースが並び、訪問者たちは顔を見合わせて苦笑していた。

 おかしい、と思った。出発前の日本での報道では「人が押し寄せ、入ることのできない人たちが暴動しようとしている」はずではなかったか。それがた とえ開会式の報道であったとしても、そのギャップは激しい。

 私は会場にあったローソンでダイエットペプシを買って、ベンチに腰をおろしながら思惟にふけった。「なるほど、これがバブルというものだな」と。 バブルでは、人々が幻想のなかに佇む。これから先、ずっと好景気が続くはずである、という無根拠な幻想である。経済成長めざましい中国が開催する万博であ れば、人が殺到しているに違いない。一つのパビリオンに入るのだって、数時間かかるに違いない。そう思っていた私も、バブルの中にいた一人だったのだろ う。

 アメリカの不動産バブル崩壊についての、一つのエピソードがある。ある不動産ディーラーは、ゴルフ場にいったときに、キャディーが不動産売買につ いて話しかけてきたという。「ゴルフのキャディーまでが不動産売買をやるようになったら、もうおしまいだ」。その不動産ディーラーは、すぐに不動産を売却 し、バブル崩壊の災難を逃れたという。

 では、ここから考えて、今の中国経済はバブルではないだろうか。万博の一例のみから私は「中国経済はバブルであり、近々に崩壊するだろう」とまで いう気はない。しかし、上海万博での人の「まばらさ」は何かを象徴しているように思うのだ。

 ゴルフ場のキャディーが不動産神話を信じていたように、誰もが中国経済の成長を信じて疑わない現在、私はガラガラのパビリオンの中で、そんなこと を考えていた。

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 先日の報道によると、大学入試センターが実施しているセンター試験では、随意契約によって15億円ものコストが、長年同じ業者に発注 されていたという。その印刷業者名は非公開であり、「情報漏洩を防ぐためだった」と説明しているようだ。

 このコラムのタイトルは「大学入試センターの印刷料はほんとうに高いのか」である。たしかに、センター側も随意契約の見直しを検討するとしている し、そのコストが「高そう」くらいの認識はあるのだろう。だから、「高いのか」については、「高いはずだ」と答えることはできるかもしれない。しかし、実 際の印刷コストを知らないにも拘らず、一部報道のように「こんなに大学入試センターが無駄遣いをしている」といってしまうのは、あまりに乱暴ではないか。

 たしかに15億円は少額ではないものの、その内訳がないとわからない。私は大学入試センターの味方ではないし、何の義理もないけれど、その点だけ は述べておきたい。

 そして、もう一つ。

 昨今、公的機関の公開入札が義務付けられているけれど、それは現場にいる人たちからいったら「やっかいなもの」である。もちろん、公開入札でもっ とも安価な業者に発注するのが、税金を1円たりともムダにしてはいけない行政としては当然だろう。それにそれが国民国家の精神とも合致する。しかし、公開 入札の形をとると、有象無象の業者がやってくるのも、また事実なのである。

 もっといってしまえば、闇社会や得体の知れない世界とつながっている業者たちがやってくる。これを、まったく免疫のない行政機関は、どのように対 応すれば良いのだろうか。この点は放置されたまま、「随意契約を止めよ!」というフレーズばかりが繰り返されている。

 ここだ、と私は思う。この国では、建前と本音がいつも分離されてきた。随意契約はいけない、という建前について誰も反対できずに、本音が隠蔽され たまま、さまざまな支障が起きてきた。

 もちろん、解決策もある。民間が培った調達・購買のスキルは、このような場面でこそ活用されるべきだ。どのようなサプライヤー(=業者)を選定す べきか。コストだけではなく、最適なサプライヤーを選ぶ技術。それを民から官へ移植すべきときが、まさに今やってきている。

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 先日報道された内容によると、「コクヨ」が全社的な残業減らしに取り組んでいるという。名前は「働き方見直しプロジェクト」。社員 200人以上が取り組み、15分刻みのスケジュールを報告し、それによって業務時間の短縮化を狙っているらしい。

 現在、「ワークライフバランス」という言葉が注目されている。この言葉は、要するに「仕事だけではなく、遊びだけでもなく。ほどよく時間配分を確 保していきましょう」というものだ。特に、高度成長期が終わったいま、仕事だけではなく家庭にも目を向ける生き方はもっと注目されていい。

 日本では、社員に支払う時間外手当が欧米諸国と比べて低かったために、経営者も「社員は長時間働いてくれるもの」という意識がなかったとはいえな い。ただ、成長期であれば膨らみ続けた仕事量も、現在では伸び悩んでいる。残業時間を抑えるということは労使双方の課題になりつつある。

 ところで、私が「残業時間を抑える」と書いたのには理由がある。労使の共通課題は「残業時間の削減」であって、「残業費の削減」ではない。さきほ ど書いたように、もちろんワークライフバランスをとることは社員にとっても大切であるものの、一方で社員にとっては残業「費」はきわめて重要な生活費補填 原資となっていたことも看過できない。

 ・会社は「残業時間」と「残業費」を減らしたい

 ・社員は「残業時間」は減っても良いが、「残業費」は減らしたくない

という構図がある。残業費が減ってしまい、「残業の復活を」と叫ぶ社員がかなりいることは、なかなか報道されない。そもそも残業とは会社が社員に命 じるものであったにもかかわらず、倒錯した構造がここにはある。なのに、これを明確に指摘したものはあまりない。

 企業のコスト計算を少しでもやったことがある人であればお分かりの通り、企業の費用の大部分は「人」にかかわるものである。残業費を減らしたくな い社員と、コスト削減を成し遂げなければいけない会社。この径庭を埋める手段こそ、現在求められている。

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クラウドという悪夢

 クラウドコンピューティングという言葉が席巻している。この言葉についてはもはや説明を要しないだろう。PC(パーソナルコンピュー タ)上にデータやアプリケーションを置くのではなく、クラウド(サーバー)上に置く。GoogleやYahoo!に代表されるようなシリコンバレーの企業 はこぞってこのクラウドビジネスに参入した。

 利用者はインターネットエクスプローラーのようなブラウザソフトさえあればいい。あとは、ネットを介して各社の保有するサーバーにアクセスして情 報を操作・獲得すればいい。PC(パーソナルコンピュータ)が壊れてしまっても、何の問題もない。なぜなら、サーバーに情報を保管しておけば、なんら心配 することはないからだ。

 そのようなBtoCの世界で急速に広がったクラウドビジネスであったが、これがBtoBになるとなかなかうまくいかない。せっかく安価なクラウド サービスがあるというのに、それを活用出来ていないのだ。

 BtoB向けのクラウドサービスの導入に今なお躊躇する企業があるのは、その情報が「他社のサーバー上に存在する」ということにある。すなわちセ キュリティの問題だ。大企業は自社で巨大サーバーを持つことでクラウド環境を実現できるだろう。しかし、それほど余裕のない中小企業は、クラウドを実現す ること=他社のサーバーを利用することになる。

 たとえば、調達・購買であれば、取引の履歴や機密情報も他社のサーバーに入れざるを得ない。これに拒絶感を持つ人たちはかなり多い。私も「クラウ ドサービスはまったく問題がない」と言い切れるほどの自信家ではない。しかし、同時にクラウドサービスの利便性を活用できないとなると、日本企業の競争力 は低下していくだろう。

 すなわち、クラウドサービスとは、日本企業のセキュリティ思想と、システム自前主義の再考を迫る機会だったのである。

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 先日、ソニーについての、刺激的な報道があった。「ソニー部品調達改革急ぐ、調達先半減前倒し」という見出しだった。同社は以前から 調達先を半減し、それによってコスト削減を図ると明言してきた。それをさらに前倒しし、本気の姿勢を内外に印象付けようとしている。

 ところで、この調達改革の急進を別の角度から説明してみよう。

 昨年、ビッグ3のGMが巨額の赤字を出してしまった。その金額は3兆円にも登った。恐ろしい金額である。かつてトヨタ自動車が1兆円の利益を叩き だしたときにも驚きを禁じ得なかったが、赤字の3兆円である。

 しかし、この件は一つの恐るべき事実を明らかにした。3兆円の赤字、とはすなわち固定費分(人件費や減価償却費等々)がそのまま赤字になっている ということである。GMは自動車を販売しても、なんと変動費(材料費)分の金額しか回収できていないのだ。GMが作ったクルマは、消費者にとってみれば変 動費(材料費)の価値しかなく、固定費分の費用はそのまま赤字へとつながっていった。

 これまで売上を伸ばすことに注力していた経営者たちも、こうなると緊急対応としては変動費(材料費)を下げるしかない。これまでは利益を伸ばすに は「売上をあげる」か「原価を下げる」か、と言われてきたが、それはもはや二択ではなく「原価を下げる」という一択しか存在しなくなったのである。

 このように限界利益(売価から変動費を減じたもの)が極限まで下がってしまう世界においては、変動費(材料費)を下げるしかなくなる。そしてその 世界においては「調達改革」は、まさにそのまま「企業の利益改革」にほかならないのである。

 製造業においては、そのGMのような事態が頻発している。材料費分しか回収できないような企業は、調達改革に挑まざるをえないのだ。

 とはいえ、ネガティブなことばかりではない。私たちはソニーを応援したい。というのも、ソニーにはぜひ調達改革から企業の利益改革を成し遂げた代 表例になっていただきたいからだ。

 ピンチはチャンスである。特に、調達・購買・資材部門にとっては。

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 先日のアイスランド火山噴火で、部品サプライヤーの納入が止まってしまった。日産自動車でのことだ。同社によると、航空便での輸入が できず、その部品を使用する国内二工場のライン停止が決まったという。部品は、タイヤの空気圧センサーのようだ。

 おそらく現場では寝る時間もなく、社員たちが対策に追われていることだろう。この事件はリスク管理の大切さをあらためて浮き彫りにしただけではな く、そのリスク管理の対象が日本だけではなく世界中に広がっているということを示している。

 しかし、次の二点を指摘しておきたい。

 1.サプライヤー供給リスクの誤謬性

 2.バイヤー企業のリスク体制の未整備

 自動車メーカーを中心として、ラインが止まってしまったら莫大な機会損失を生じてしまうメーカーが、サプライヤーに対するリスク管理を徹底してき た。サプライヤー(部品メーカー)は、火災などの災害時であっても、絶えることなく自動車メーカーに部品を供給し続けることを要請されてきた。また、災害 時に備えて、自動車メーカーも一体となった対策が講じられてきた。

 しかし、対策とは「すでに起こってしまった災害」に講じられるのがほとんどである。起きてもいない事象に対して、対策を打てる企業はほとんどな い。もちろん、次回はアイスランドで火山噴火が起きても、部品供給はストップしないかもしれないが、他の地域であればまた止まってしまう可能性はある。リ スク管理とは、常に完璧なものではなく、どこまでも不十分なものであるという認識がなければならない。その認識の上で、「どこまで完璧にするか」を考慮す るのだ。

 さて、より重要なのは2.のほうである。これは日産自動車に限らず、ほぼすべての最終バイヤー企業において、その企業自体のリスク管理がなされて いなかった。つまり、日産自動車はサプライヤーに対してはリスク管理を要請することはできるが、日産自動車自体の工場が災害に見舞われた際に、即生産を完 全代替できる工場は持ち合わせていない。これは批判ではない。物理的にそのような工場を予め持っておくことはできないのである。たとえば、三河にあるトヨ タの工場が突然大地震に見舞われ崩壊してしまったら、私たちはなすすべもないのである。

 アイスランド火山噴火による供給ストップは、サプライヤーの供給リスク管理の大切さだけを物語っていない。バイヤー企業が樹立したくてもできな い、自社リスク体制の未完備をも予見させるのである。

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 昨今の調達・購買関係のシステムに一つの潮流がある。それは、各社の「CO2排出量を計測し、それをマネジメントする」というもの だ。固有名詞はあえて省くものの、大手ベンダーから中堅ベンダーまで、さまざま入り乱れ、バイヤー企業へこのシステムを販売することに躍起になっている。

 温暖化ガスが、ほんとうに地球温暖化に影響を与えているかどうかは定かではない。むしろ、多くの異論があるくらいだ。「温暖化ガス」という名称そ のものが、地球を温めてしまうというイメージをもたせていることは間違いない。しかし、私が述べたいのはそのような「地球温暖化ガス影響疑惑論」ではな い。それならば、多くの論者がすでに存在している。

 私が指摘しておきたいのは、「CO2の排気量ばかりを計測したがる」姿勢にこそある。なぜか。人によっては、「温暖化ガス」とはCO2のことと 思っている人がいる。それは違う。

 地球温暖化の話題になるとき、「温暖化ガス」とはCO2のことだけではない。温暖化に影響するものは黒色炭素や窒素酸化物、HFCなど複数ある。 CO2は、その一部にすぎないのである。

 しかし、このことを知ってか知らずか、売り込みを受ける側のバイヤー企業も「CO2削減」のみを叫んでいる。ほんとうは、CO2だけではなく黒色 炭素や窒素酸化物、HFCなどの気体を総合的に減らしていかねばならないというのに。CO2だけを削減することがイデオロギーになってしまうのは、あきら かに危険である。

 CO2を減らすことを批判するわけではない。しかし、CO2削減とは一つの手法にすぎず、真の地球温暖化対策を講じたいのであれば、他の要因にも 目を向けなければいけない。「CO2排出量を計測し、それをマネジメントする」システムの跋扈の裏で、私はそんなことを考えている。

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 先日報道された内容によれば、新日鉄住金ステンレスが国内の一般流通価格について、これまで以上に迅速な価格反映を実施するという。どういうこと か。それはステンレスに使われる原料であるフェロクロムやニッケルの調達価格の上昇を、すぐさま自社の販売価格に転嫁するということだ。

 ニッケル系とクロム系で上がり幅は違うものの、4月から早速「値上がり」になっているという。おそらく、現場の価格交渉では侃々諤々の議論が交わ されていることだろう。

 これまで、材料系の価格を決めるときに、どうやって原料価格の高騰(下落)を反映していたかというと、「過去数カ月の平均原料価格を利用する方 法」が一般的である。これは、材料によってそのスパンがさまざまであり、習慣や慣例に従うことがほとんどだった。

 たとえば、厚中板であれば(報道によると)これまで取引時点から遡ること2ヶ月の平均価格を採用していたという。それを、今回1ヶ月のスパンに変 更するというのだ。どちらかというとこれまで中期的な価格を反映していたところ、短期的な、まさに「直近価格」を反映しようとしているのだ。

 しかも、これはこの新日鉄住金ステンレスだけの動きではない。このことから注意すべきは次の点である。

 (1)材料調達は、これまで以上に情報戦の様相を呈してきたこと

 (2)市況変動から価格決定までのスパンが短くなり、バイヤー企業の体制も機敏性が求められること

 (3)バイヤー企業は、価格変動にたいしてこれまで以上に社内説明が求められるようになること

 おそらく、材料獲得とは情報獲得と同義だろう。もう、そんな時代がそこまでやってきている。

坂口孝則(http://www.co-buy.co.jp/

 先日、朝日新聞社とパナソニックは両社共同による物流を開始することを発表した。朝日新聞社の車両を使って、パナソニックの製品・サービス部品を 運ぶという。同じく発表では、共同輸送によって空回送距離の短縮と、低公害車による環境負荷低減を目指すとのことだった。両社のこの発表は、新たな共同調 達のあり方を象徴している。

 (1)これまで同業種内で、競合他社と実施していた共同調達が、業界の垣根を超えた取り組みになっていること

 (2)以前メディアで報じられた異業種間「競争」は異業種間「協業」に発展し、SCM観点から環境対策に取り組む企業が増えてくるであろうこと

 (3)コスト削減効果の観点を脱し、CO2削減の指標がこれまでに増して重要になってくること

 そこで、やはりここではまず(1)に注目したい。まったくの異業種間の共同調達の潮流である。これまで、共同調達をする際は同業者間のものが一般 的だった。電機メーカーや建機などの例を取りあげるまでもなく、上層部主導あるいは調達・購買部門主導であったために、どうしても同業種協力の共同調達が 一般的だったのだ。

 しかし、考えてみれば物流などであれば同業種だけで行わなければいけないという決まりはない。特に製造業であれば、製造拠点が局地化しているとこ ろも多いために、どうしても配送経路にムダが出てしまうことは避けられない。

 この共同調達の例が指し示すのは、「情報購買」というものの新たな姿でもある。これまで、情報とは「競合他社情報」のことであった。しかし、これ からは同業種・競合他社に関わりのない、広い意味での情報が必要となる。情報購買の大切さのほんとうの意味は、これから始まるのである。

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 ロイターが報じたところによると、日本の金型技術は海外に流出し、さらに日本の金型メーカー自体も買収の対象にさらされているという。同じく、ロ イターは某社の「自動車メーカー内で技術者より購買担当者の権限が強くなり、1円でも安い金型を使うため海外製を使う傾向が出てきた」という発言も報じて いた。

 これを3点から論じてみよう。

 (1)金型はそもそも海外流出しやすいコスト構造を持っていること

 (2)自動車メーカー内の購買担当者の権限が強くなったことは一側面にすぎないこと

 (3)金型技術者の活躍先は日本だけではないこと

 さほど知られていないが、金型に占める材料費率はきわめて低く、そのほとんどが加工費(減価償却費・労務費)である。そこがまさに日本の金型職人 の付加価値であった。低い材料費をもとに、加工を施すことによって、精度の良い高価な金型に仕上げるのである。だから逆に海外の金型技術レベルが上がって いくということは、その分の加工費が安価にできるということでもある。材料費が大半を占める部品とは異なり、金型の場合は加工費が大半であったことから、 代替されやすい構造であった。

 ただし、そのような安価な金型にシフトしていったのは(2)の要因ばかりではない。もちろん、購買担当者はコスト低減に敏感ではある。ただし、よ り大きい要因は自動車メーカーの少量多品種化である。少量多品種化にあっては、一機種に配賦される金型費が高くならざるを得ない。1000万円の金型を使 用し、10万台販売できるのであれば一台あたり100円にすぎないが、1000台しか販売できないのであれば一台あたり1万円にもなる。

 ただし、産業構造の空洞化とは別に(3)も考慮せねばならない。というのもロイターが伝えている通り、日本の金型技術者は海外の企業に「転職」し ている例もあるからだ。すなわち、一見すると日本の金型産業が弱くなっているかのように感じられるが、実際は日本の金型技術者が海外に移行しただけ、とい う見方ができる。日本の金型メーカーは弱くなっているものの、一方でその日本の金型「技術」を活用している海外金型メーカーは増えている。この問題は多岐 にわたる。それは、「メイド・イン・ジャパン」の金型を守りたいのか、「メイド・バイ・ジャパン」の金型を守りたいかの議論を包括するからである。

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 トヨタ自動車は、「RRCI」というスローガンを掲げてコスト低減活動を開始した。この「RRCI」とは「良品・廉価・コスト・イノベーション」の頭文 字をとったものだ。新聞報道にこのフレーズが踊ったのは最近のことであるものの、実際は2009年末からスタートしていた。

 自動車メー カーは部品メーカーの協力なしには、もはや開発や生産ができない。コンポーネント(部品単位)、モジュール単位、それぞれの領域を担当しているサプライ ヤーの技術力を、開発の上流工程から活用している。

 ということから、このトヨタ自動車の「RRCI」だけではなく、すべての自動車メー カーのコスト低減活動は「サプライヤーからの提案をベースとしたもの」にならざるをえない。実際「RRCI」では、サプライヤーに対してこれまでにないド ラスティックなコスト低減策を募ったという。また、トヨタ自動車自体も、サプライヤーと協業して中国メーカーに対抗できるコストレベルを目指すという。

  中国並み、ということは、だいたい3割減を想定できる。この難易度はどれくらいだろうか。たとえば、自動車部品の平均アッセンブリー費は同じく3割くらい だと考えられている。すなわち、日本の部品メーカーは、アッセンブリー費を「0(ゼロ)」にしなければ、中国並みのコストは実現できない。なぜなら、材料 費等はサプライヤーにとっても外部調達費であり、容易な低減ができないからだ。もちろん、実際にアッセンブリー費を「0(ゼロ)」にすることはできない。 日本の労働者の賃金を0円にするわけにはいかない。

 とすると、やはり日本の自動車・部品メーカーがほんとうに中国並みのコストを実現す るとすれば、その多くは設計変更に頼らざるをえない。ただし、自動車メーカーは仕様・要求品質が高く、やすやすと質を落とすような変更はきわめて困難であ る。

 私たちは「RRCI」の活動を応援したい。なぜならば、これには日本のものづくりの底力と、意地にも似た執念が投影されているから だ。この活動の成果が自動車産業の明日を占う。

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